顔人が原因で増えた野良猫を、地域で見守っていきたい
八王子・放射線道路沿いのフリーマーケットにて、左から 出井さんのご主人、メバーの坂本さん、出井さん、鈴木さん、お手伝いしてくださった一般の方

八王子市南新町で、野良猫の不妊・去勢手術や苦情相談などを通じて地域猫の問題に取り組む「ねこちゃん協議会」は、2000年から始動、その後ボランティアで活動を続け、2003年にNPO法人として認証された。

都内にいる野良猫は98年の都調査では約11万頭とされており、現在は少しずつ減少していると考えられるが、猫をめぐる苦情は後を絶たない。東京都動物愛護相談センターの発表では、保護された猫の引き取りは犬に比べて極めて低い率にとどまっており、同センターの平成17年度資料では猫取扱数は6186頭(成猫923頭、子猫5263頭)でそのうち5926頭が殺処分となっている。

飼い主に捨てられて増えてしまった野良猫を、人間の都合でまた殺してしまう、という以外に解決方法はないのだろうか。野良猫の問題から見た地域、八王子はどのように見えるのか、「ねこちゃん協議会」代表の出井富美子さんにお話をうかがった。


第1話第1話 これ以上野良猫を増やさないために

人間関係がトラブルの大きな要素

―― 活動の内容と始められたきっかけをうかがえますか?

「ねこちゃん協議会」のスタートは平成12年8月22日です。会員数は多少流動的ですが40名ぐらい。活動の主な内容は野良猫の不妊・去勢手術と里親募集、苦情相談です。地域やお隣同士のトラブルは、人間関係が原因で起こることが非常に多いのですが、そこに野良猫がいれば90パーセントは深刻化します。私たちはもちろん猫が好きですし可愛いですが、活動の比重は人間を対象にする方が多いと思います。猫を間にしてこじれた関係をこのまま放っておいてはいけない、と思ったのが、私がこの活動を考える時の基本になっていました。

スタート前の1年間、準備をしながらいろいろな方にお話をうかがって、本当に大変だなとは感じましたが、実際こんなに大変だとは思いませんでしたね。


苦情への対処はまず話し合いから

―― 猫がトラブルになるきっかけはどんなことでしょうか。

まず、ゴミ漁りと排泄の問題です。私たちは場所を決めて野良猫にエサをあげていますが、そうしなければ猫たちはビニールで包んだゴミの中から残飯を引っ張り出します。猫たちはそれを原因として捕まって殺されてしまう。でも決まった場所でエサをあげていればその地域の猫たちは絶対にゴミ漁りをしません。現在、私自身がそうやってエサをやっている猫が30匹いますが、ご飯があちこちにあるわけではありませんから、エサ場には自然と集まってきます。


―― ちゃんとエサが与えられれば、そこできちんと食べるわけですね。

ええ、猫は非常に利口な動物で、人間の言うことは分かります。ただ人間が猫の言葉を理解しようとしないので戸惑うのです。

排泄でよく問題になるのが、花を大切に育てているお隣の庭で猫がオシッコをしてしまう、などの場合です。猫の尿は刺激が強いので花が枯れて苦情が出ます。こういう場合は、絶対無視してはいけません。まずすみませんと頭を下げて、トイレを置かせていただけるようにお願いします。猫がいつもする場所の近くにダンボールなどで屋根をつけてビニールで囲ったトイレを作ってあげれば、猫は必ずそこでするようになります。その後始末を毎日ちゃんとするようにします。

ただ、猫を見るのも嫌な方もおられますし出来れば来ないで欲しいという場合もありますから、徐々に場所をお隣とは反対側に移動して行けば、猫はその家を通らなくなります。ただこれには根気が必要です。私の例ですが、仕事後に猫の糞を取りに10ヶ月間、毎日通ったこともあります。もめごとにしないためにはまず話し合いをして、とにかくご近所と仲良くすることです。最初に苦情を言われたときに直ぐに対応すれば何も起こりません。ご近所と仲良くやっていらっしゃれば何一つ問題にならないのです。


不妊手術の重要性と大変さ

―― なぜ不妊手術が必要なのでしょうか?

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捕獲器の説明をする出井さん。奥のエサにつられて猫が入ると扉が閉まる仕組みになっている。

なんらかの事情で飼えなくなった猫が捨てられて、それが増えると大きな問題になってきます。メス猫の出産は年に2、3回、一度に4、5匹の子猫を生みます。野良の子猫が成長する率はあまり高くありませんが、メス一匹いれば1年で10匹近くに増えてしまいます。発情期は決まっていますからメスが同時に子供を生んで、いっぺんに増えてしまう。そうなって初めて大変だと慌てることになるし、さらに増えた子猫の多くは殺処分になってしまいます。地域の猫を増やさないためには不妊・去勢手術をすることが不可欠なのです。


―― 手術によって野良猫が増えずに済むし、殺される猫も減りますね。

そうです。野良猫の寿命はせいぜい3年程度ですから、手術後に地域の猫として見守ってあげられれば、数を減らしながら寿命を全うさせてあげることができます。私たちは野良猫にはまず餌付けをして捕獲器で捕まえ、手術後に放すようにしています。

まずはメスの手術が優先ですが、実際はオスもやらなければ駄目です。メスは自分の子以外面倒を見ませんが、オスはとても子猫の面倒見が良いので、せっかくその地域のメスに不妊手術をしても、オスが遠くまで出かけていって子作りをして、また連れて帰ってしまいます。その場に10匹猫がいたらオスもメスも手術が必要で、メス一匹残してしまったらもう元の木阿弥です。

ただ、1匹の手術代は1万円から3万円程度かかり、私も個人で23匹くらいの不妊手術をやりましたが本当に大変です。地域によっては、区が助成金を出したり町内会で不妊手術を実施しているところもあります。これは地域の皆さんの関心が高く、猫の問題に理解があって可能なことでしょう。「ねこちゃん協議会」には現在、協力してくださる獣医の先生がお一人いらして、会員や一人でたくさん野良猫を面倒見ている方は手術や治療を半額でやってくださっています。そういう病院は八王子にはそこしかありません。最初は忙しいからとても出来ないというお話でしたが、なんとかお願いして、現在まで500匹以上の手術してくださっています。本当に有り難いです。

第2話 「地道な活動で徐々に大きな成果が」に続く