顔浅川流域市民フォーラム副代表 松尾圭庸(まつお よしのぶ)さん 「かつて遊んだ浅川の豊かだった自然を取り戻したい」

第3話市民が参加できる川づくりを続けたい

浅川で鮎釣りが楽める日は来るか

―― ご自分ではどの魚を釣るのがお好きですか。

カジカ
昭和51年11月17日 浅川橋下での釣り会の模様

やっぱり鮎の友釣りですね。友釣りは鮎の縄張り意識と闘争本能を利用したもので、糸先に生きた鮎を一匹仕掛けて、別の鮎が体当たりしてくるのを引っ掛けるんです。これは日本にしか無い釣り方だそうで、ものの本では友釣りを「ヒラマサの当たりと鯛の引き」と言うそうです。ヒラマサは海の魚で体長が7、80センチ。それがえさにガツンと食いつく。鯛は食いつくと一気に底へ底へと引いていく性質があって、その二つが味わえるわけですよ(笑)。日常の生活や仕事で胸が鳴るとかドキドキするなんてまず無いでしょう。それが鮎1匹かかるともうドキドキするんですよ(笑)。しかも川でそういう楽しみが味わえる。


―― じゃあ、浅川で鮎釣りが楽しめるようになったら本当に素晴らしいですね。

鮎(アユ)

そうなんです。最近、漁業組合関係の人たちと話をする機会がありまして、今年は浅川へ鮎を2000匹ぐらい放すそうです。これは漁業組合が毎年5月頃にやっている義務放流で、今までは1000匹くらいを市民にはまったく知らせず放流するだけでしたが、今年はちょっとアピールしよう、ということですね。ただ、私はその前に河川整備をして鮎が住める状況にしなかったら、何千匹放そうがみんな川鵜のえさになっちゃうだけだよ、って漁協の方と話しているんですが、今のところ手の打ちようが無いですね。

私たちも何年か前には浅川で24、5センチになる鮎を釣っています。ですから実際にいることはいるんです。けれどもやっぱり環境整備をしないと皆さんが鮎釣りを楽しめる形にはなかなかならないですね。まず水量が少ない、子砂利が多くていい石が無い、いい垢、えさになる藻が付いていない。そういう条件を揃えてやらないと鮎が可哀相です。八王子あたりで川の石が起きていて綺麗だなと思うのは、やっぱり北浅川の松枝橋から上流ですね。そこから上に行けば今でもカジカがいます。鮎もそうやって増えて行くといいのですが。


河川整備計画に住民の意見を反映させる

――行政と各ボランティア団体の関係はいかがでしょう?

いい方向に行っているとは思います。現在、「多摩川流域懇談会浅川部会」として、私たち浅川流域市民フォーラムと国交省の京浜土木事務所、南西建(東京都南多摩西多摩建設事務所)と八王子市の都市計画課、日野市の「緑と清流課」の5者が隔月で、浅川とその16支川、これが東京都と自治体の管轄になりますが、その状況について話し合いの場を持っています。

これは平成9年の河川法の改正で河川整備計画に「環境保全」と「地域住民の意見の反映」という観点が盛り込まれるようになって、市民が参加できる場が設けられたんです。市民団体がそういう場に出席して意見を述べられるのは全国でも珍しいのですが、私もずっと参加してきて、最近は当初の意気込みとはちょっと変わって、やや昔の上意下達的な状態に戻りつつあるような懸念があります。

行政との交渉は個々の市民団体の力だけではちょっと弱いですから、まだまだ結束してやっていかなければならないし、重大な決定に影響力を持つことは難しいですが、これからも民意を挙げてそれを十分汲み取ってもらうような活動をして行きたいと思っています。

私としては、皆さんが河原へ背を向けないで目を向けてもらいたいのです。そのためには簡単に浅川に親しめる、河原に降りられるような環境も必要です。現在の堤はコンクリートで固めた急斜面が多く、気軽に河原へ降りられる場所が少なくなってしまっています。車椅子でもとは言いませんが、誰でもすぐ水辺に親しめるような、夕方ちょっと浅川で釣竿を出せるような、そんな場所がどんどん増えていってくれればいいな、と思いますね。

萩原橋近くの河原より上流を望む

行政との交渉の成果

――何か具体的な成果があればご紹介ください。

私たち市民団体が国交省と話し合いを続けていく中で、この点は良かったと思うのは、新しく河川工事をする場所についてはなるべく河川側へ下りられる階段を作って欲しいという要望を出していて、以前よりもだいぶ階段が増えたことです。国交省としては階段を作ると増水時に水が不規則に渦巻きやすく破提の原因になりかねない、と嫌がります。しかし、地域の人たちが川に下りるためにはそれも必要ですし、近隣で大きな火災が発生した場合、そこから水を引いたり、階段から河川敷に避難することも出来ます。場所によっては堤が急斜面で使い勝手のいい階段にならないところもありますが、でも無いよりいいですから。

――市内で気軽に行ける場所に川が流れていて、人が集まれる場所があれば、こんな素晴らしい環境は無いですよね。

水無瀬橋付近の河原(06年8月)

今年から4月29日が「昭和の日」になって、八王子市も多摩御陵の周辺整備に取り組むようです。南浅川沿いの桜がこの2、30年でいい幹の太さになりましたから、これは美しい桜並木になると思います。東京都の河川局も重点的に整備する、ということです。

桜並木は水無瀬橋のちょっと上流から始まって高尾駅の近辺、多摩森林科学園の桜保存林あたりまで誘導するような桜の遊歩道が出来るそうです。われわれも地域住民と一緒になって関係機関と話合いながらやっていければ、いい散策コースになるでしょうし、将来的にはここが八王子の名所の一つにもなると思います。


――川をめぐるいろいろな意識を持った方たちのネットワークみたいなもので、浅川そのものもだいぶ良くなってきつつある、ということでしょうか。

確かに良くなりつつあります。ただ、なにがいい川か、という定義は難しいですよね。すべての人を満足させることは不可能ですし。でも黙っているのと、声を出すのでは大きな違いですね。われわれも自然豊かな浅川を後世に残していくためにはまだまだやらなければいけないことが多いと思います。これからも浅川の水と地域との関わりを求めて活動していって、私たちも住民の方たちと話し合いながらどういう要望があるのか、国にどんなことがしてもらいたいのかを協議会を通して申し上げて、処置、実行していだだくということ続けたいですね。今のところ結構いい結果が出ていますよ。


――どうも有難うございました。 (了)