顔浅川流域市民フォーラム副代表 松尾圭庸(まつお よしのぶ)さん 「かつて遊んだ浅川の豊かだった自然を取り戻したい」

第2話多くの自然が残る川づくりのために

川の浄化を願って、市民フォーラムの活動

現在、浅川流域市民フォーラムでは主な活動として水質調査をやっています。この分野で大変ご高名な東京農工大名誉教授の小倉紀雄先生が代表として積極的に関わってくださって、経年的な変化を見ようと今年で3年目ですが、あと何年か続ければ立派なデータになると思います。本流の方はだいぶ安定してきて少し良くなったようですが、まだ細い支川では年によって変動があります。

また、2004年6月から全国で「身近な水環境の一斉調査」が開始され、今年も6月に、北海道から沖縄までの各河川で一斉に水質調査を実施しますが、われわれも参加して浅川の水質データを取ります。試薬もマニュアルも統一しての調査ですが、われわれの地元・浅川が全国的にどんなレベルなのかは、こういうことをしないと分かりませんからね。

一昨年くらいまで浅川上流部は下水処理が不完全で、それが全部流れ込んでいたために、石の重なっているところが目詰まりして、石の下を住処に子育てするカジカなどは全然いなくなっていました。ところが年明けに川を見たら、年末に降った大雨で石の表面のヘドロが全部流されて、十年ぶりに石が起きているのが各橋の上から見えるんですよ。嬉しかったですね。これだけ綺麗ならカジカが居れば必ず生き抜けるだろう、という確信を持ちました。ただ、現在も鶴巻橋浅川橋の補強など河川工事が続いていて水が濁りますから、やはり目詰まりを起こしてしまう。現在は何となく元の状態に戻りつつあるようで残念です。

カジカ
カジカ

幸いなことに平成19年度末までで八王子の下水道が、市域については完了する計画ですので、そこに河川浄化の望みをつないでいるんです。上流部の方たちは、昔どおりの汲み取りを復活させて川に流さず、我慢して河川浄化に協力してくださっているという話をずいぶん聞いています。市民の感情や考え方がそういう方向に向いているのは、すごく嬉しいことですね。


貴重な生き物が住める環境を守る

―― 浅川で釣れる魚の量や種類もだいぶ減ってきているんでしょうか?

浅川大橋下流にある小さなワンド

そうですね。まず浅川の国交省管轄区間では「ワンド」と称される川沿いの水溜りが本当に少なくなりました。ワンドは稚魚の生息場になるなど、川にとって大切な場所です。浅川でも残っているワンドに小魚がたくさんいる時があります。それが数週間すると全くいなくなってしまう。近所の人に聞くと、このところ川鵜がずいぶん来てますよ、と言うんです。川鵜は人がいなくなるとすぐやって来て、潜って魚をきれいに食べてしまうし、逃げ出した魚は中鷺と小鷺が待っていて捕食してしまっていたんですね。

鳥類の専門家は、川鵜は浅いところは動きが下手で魚を捕らないというんですが、観察してみるとちゃんと捕っています。ワンドが減って、残ったワンドには川鵜が集まって稚魚を取ってしまうという悪循環で、魚の量はかなり減ってきています。


――希少種などはまだ見つかるんでしょうか?

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ヌカエビ
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ホトケドジョウ
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ギバチ

浅川全体ではかなりの種類の魚が確認されていますが、本流では本当に少なくなりました。フォーラムで水棲魚類調査を実施しましたが、支川やワンドではゴマドジョウやヌカエビなどの希少種が発見されています。居なくなってしまった魚もいますけれど、希少種が増えているワンドもあるようです。

ワンドは浅川上流部、八王子市内でおそらく2箇所、長沼地区から下流で2、3箇所ありますが、そこには昔ながらの魚がいます。子供たちのためにも是非これらを残していきたいですね。萩原橋の上流にあるワンドは、ホームレスの人が橋の下にいるので、幸いなことに川鵜が来ないんです(笑)。だから結構細かい魚がいて、昔からの姿が残っている貴重な場所ですね。私たちが調査したときには、そこで絶滅危惧種のホトケドジョウを見つけました。この種は多摩川近在の川でも数が減っています。あそこは大事にしていきたいですね。

ジャケツイバラ

ワンドの周りには貴重な植物もあります。ジャケツイバラという春先に見事な黄色の花を咲かせる低木やチシャという食用になる植物もありました。水が良くなればそういう生物、植物も増えてくれるんじゃないかと思っています。こういう希少生物、希少植物が浅川にはまだ残っています。また、やはり絶滅危惧種でナマズの仲間のギバチという魚が増えているという情報もありますので、水質が改善されれば数年のうちには相当いい変化があるんじゃないか、と期待しています。



魚が行き来する川に

――松尾さんがお考えになる「いい川」はどんなものでしょう?

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ハーフコーン型魚道

私のやっている釣りなんていうのはわりと穏やかなものですから(笑)、自然環境や川の状態はこうでなくてはいけない、というガチンガチンに激しいものにはならないんですね。

それでも釣りをする立場からいい川と言えば、魚が海から川の上流まで行ったり来たりしてくれるのが一番ですが、実際は途中に堰や落差工が多くて難しかったんです。それがハーフコーン型魚道という工法のおかげで東京都の河川ではだいぶ改善されてきました。これは従来の普通の階段状ではなくて段差を斜めに傾けて交互に階段状に並べるやり方で、これだと水が溜まったところを魚が上手く伝って上れるようになっています(図参照)。

多摩川本流でも、大きな堰は迂回する魚道を作らなければならないでしょうが、それ以外はかなり改善されてきています。日野用水堰、通称「平(たいら)の堰」も拝島側で改良され、さらに拝島橋上流の、秋川と奥多摩川との合流にある昭和堰も改善されています。ですから今年辺りは多摩市で放流した鮎は、秋川に入るんじゃないでしょうか。奥多摩へはまだちょっと無理かな、ましてや東京湾で越冬した「江戸っ子鮎」が上流まで来るのはまだまだ無理でしょうが、だいぶ良くなってきていますね。浅川もそういう方法を取り入れていい方に変わって行ってくれればいいと思います。せめて今から30年くらい前の川の姿に戻ってくれればね。その頃はまだまあまあ魚を釣る人もいましたしね。今は釣り人をあまり見なくなりましたから。


第3話 「市民が参加できる川づくりを続けたい」に続く