顔世界へ発信する八王子の伝統芸能「八王子車人形」


第3話第3話 未来へと継承される伝統芸能

伝統を引き継ぐのは現在の子供達

撮影:柳本史歩
西川古柳 さん

―― 車人形という伝統芸能を継承していく上で、どんな事にご苦労されていますか?

 現在、座員は四、五十代が中心となっていて、間がポンと抜けて中、高校生が現在稽古中なのです。各年代にリーダーが必要と感じているのですが、どうもうまく繋がらず頭を悩ませているところです。実際、僕の父が他界した時にも、父と僕の間に誰も座員が居なくて何がなんだかさっぱり分からなくなり、それでも続けていかなければならない責任を背負わされているわけですから、正直どうしようと悩みました。ですから、僕の後を誰が継ぐにせよ、スムーズに引き継ぎが出来る状態にしておきたいのですけれど。

家元の遣う人形は生き生きと動き、豊かな表情さえ感じられる。

―― 八王子車人形を鑑賞される方にアドバイスをいただけますか?

 芝居によって観方はそれぞれだと思いますが、浄瑠璃ですから古典を如何に楽しむかということですね。言葉の難しいところは、人形の動きや表現を観ていただいてイマジネーションを働かせて観ていただければ、それで充分だと思います。又、昔も今も考え方や表現に変わりがないことに気がついていただけると思います。ですから、駄洒落や冗談も昔の人が笑ったように、今でも笑えるのです。


―― 次の世代の育成についてはどのような取り組みをされていますか?

 最近では、毎年夏休みに二週間の予定で文化庁委嘱事業として、小・中学生を対象に車人形教室をやっています。もう四年間続けていますが、人形を自分で製作し遣えるようになる事を目標としてやっています。これまでは、人形の首(かしら)を作ったり、胴体を作ったりしてきました。今年はろくろ車を製作します。ですから、毎年参加しているお子さんは、車人形一体を完成することが出来るのです。実際、四年間欠かさず参加している熱心なお子さんもいて、嬉しく思っています。
子供達は、車人形や古典的なものを古いと感じていない事に驚きました。彼らにとっては、今まで見たことも聞いたこともなく、全く新鮮なものである、とても興味を示してくれます。そして、教室での授業の中で車人形に実際に触れて、同じものを作れる事に喜びを感じ、心から楽しくでくれる。これが何より大切で、子供達を育てる事に繋がっていると感じています。このような形で一度でも車人形と接点があれば、将来、大人になってから車人形の字を目にした時に、子供の頃に観たことある、作ったことがあるからということで、足を運んで下さるきっかけとなると思うのです。大人になってからでは、観たことも無いものを観ようという気持ちにはなかなかなれないものです。ですから、今このように、子供たちと関わることの出来るこの時間を大切にしています。


―― 最後に、家元の夢は何でしょうか?

 やはり、車人形に興味を持って下さるお客様がもっと増えることですね。楽しんで観て下さる方が多くなれば我々も今まで以上に遣い甲斐も出てくる、相乗効果で切磋琢磨し、車人形もさらに向上することが出来ると思うのです。これからも、何があろうと車人形に関わっていきたいし、次世代に引き継ぐまでは責任を持ってこの八王子車人形を守っていきたいと思っています。

―― 本日はどうも有難うございました。 <了>