顔世界へ発信する八王子の伝統芸能「八王子車人形」


第2話第2話 八王子から世界へ広がる人形遣いの技と心

八王子車人形と地域との繋がり

―― 車人形は「車人形」に「八王子」がついて「八王子車人形」で一つの言葉になっていますね

撮影:柳本史歩
西川古柳 さん

「車人形」に「八王子」がついて「八王子車人形」となったのは、先々代の頃で、昭和30年代です。

―― 八王子市、東京都指定無形文化財と国の選択民俗無形文化財に指定されていらっしゃいますが、その経緯をお話いただけますか?

 昭和31年に八王子市が認定してくださいまして、そのお陰で昭和37年、東京都が東京都指定無形文化財に、その後平成8年に国の選択民俗無形文化財になったのです。八王子市は、『文化の香る街八王子』をテーマにしておりまして、「車人形の育成のための講座」を設けてくださり、それが後継者の育成に繋がっています。育成というのは、ただ単に人形を遣う側だけの育成ではなく、観ていただく側も一緒に育てていこうという事なんです。
また、先の話になりますが2010年に高尾の森で八王子車人形を中心に観劇の出来る劇場をオープンさせようという計画がありまして、僕もその企画に関わっているところです。市の協力の下、指定管理者制度という形で、古民家を移築して、改装を加え、ある程度古民家の形を残しながら、一歩中に入ると完全な芝居小屋になっているというものなんです。現段階では、八王子車人形をうちの家系で誰が継ぐかは全く分からないのですが、これによって、いずれによせ基点となる土壌がきちんと出来る訳ですから、八王子から車人形を未来まで発信し続ける可能性が出てきたと思います。
車人形は、個人の所有物となっているわけですが、これを例えば市に依託して個人の手から離してしまった場合、予算が無いから止めよう言う事になったら、その時点で絶えてしまいます。ですから誰かが、私財を擲ってでも責任を持って守っていかないと車人形の継続はありえないのです。
かといって、全く個人だけの力だけでは、やはり無理が生じてくるので、後援会や市にバックアップをして頂きながら継続していく現在の形が一番好ましいと思っています。まちづくりの中で、八王子市と共に文化振興の方策を考えるのであれば、このような企画は、良い方向に進んでいると思います。出来れば、地方でもこのような企画が波及してくれればいいなと思っています。


国内そして海外へ

―― 海外でも活動をされていらっしゃいますね。

 やはり日本だけでなく海外でも求めているところもありまして、最初は、国際交流基金から派遣されて、海外での道が開けたのですが、徐々に、個人的に是非来てくれないかという依頼が増えてきて、この頃では一年にニ、三度ほど海外で活動しています。


―― 外国では観客の感覚は日本とは違うのでしょうか?

西川古柳座の舞台上でのインタビューの様子

 公演内容は日本と全く同じですけど、それに対する反応もそれほど違うとは感じません。ただ海外には、文楽や車人形のように伝統的な人形の遣い方が無くて、人形劇イコール子供の観るものという感覚が強くて人形の芸術性を高めようとか、より繊細な動きを求めようとすると、人形が何故かどんどん大きくなってしまいその結果、その遣い方をどうしようかという壁にぶち当たってしまうようです。ですから海外の同業者の間では、車人形のように大きな人形を一人で操っているというのが、魅力的のようで、そういった意味での歓声は日本とは違うような気がします。
又、例えばスペインなどではフラメンコを自分なりにアレンジしたりして、それぞれの国に応じた演目も観ていただいています。そうすることによって、車人形をより身近に感じ、人形の構造を教えて欲しいとか、自分たちも車人形を学んでみたいなどの要望が強まり、近年では、公演プラス体験講座という形が多くなってきました。


―― 伝統を守ると同時に新境地を広げているのですね?

 その通りです。伝統というものは、守るだけでは後退してしまうと思います。同じ演目であっても、その時代に対応した表現方法であったり、考え方であったり少しずつ進化させていかなければ、せっかくの伝統芸能も衰退していくと思います。もちろん古典的な振りは、基本としてしっかり押さえた上での話ですけどね。