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商いは値段より品質で買え

黒沼章さん

自慢の鰹節
――ご商売の鰹節についてうかがえますか?
私は旨いもの、品物のいいものを揃えようと思っています。鰹節は削ってしまうとだいたい味が落ちちゃうんです。だから味が落ちにくいこういうのを削れと言って品物を指定してね。その品物はうちっきり売ってないんです。それから、私は値段を買うんじゃなくて品物を買うんだ、と思ってやってます。値段を買うとなるとどうしても安いものに行ってしまう。他のことが眼に入らなくなるんだね。
――いい鰹節はどうやって見分けるのでしょうか?

私は鰹節を見るのが好きでね(笑)。昔は鰹節を見によく最大手の問屋さんへ行って、いい鰹節を作るところの品物を見て買ったもんですよ。鰹節を作るのが上手なところの人っていうのは、オレはそんな魚質じゃあ鰹節なんか出来ねえっていう人たちだから、品物がちゃんとしているからね。


鰹節にする魚は脂があり過ぎて駄目、無さ過ぎて駄目、その中間がいいんです。生の鰹の大きさにもよるけど、形のしっかりしたみんなが好む頃合の大きさだと、57キロくらいの魚が10キロの節になる。鰹節には厚さがあるでしょ、その中まで火が通らないといけない。火が通ってないと中から腐って茶色いカスみたいなカビが出てくる。品物が分からない人はそういうものでも安いからって仕入れちゃうことがあるんだね。




店内を飾る古い看板
 ――ここを見れば分かるという簡単なものではないんですね。
まあ鰹節っていうのはこういうのが良いんだと言葉では表せない。結局、眼が憶えるものなんですよ。いまは東京の問屋にも鰹節の良し悪しをちゃんと議論出来る人はあまりいません。早く言ってしまえば、みんな千円で買ったものを千二百円で売れば2割儲かるだとか、そういう金の儲け方ばっかりになっちゃって。
 ――今もご主人が鰹節をご覧になるんですか?

店内には選りすぐりの鰹節や昆布、豆などがずらり
いや、問屋さんに私が信頼している古い番頭さんがいて、この人が私の気に入る鰹節はみんな知ってますから、いい加減なものは持ってこないです。この人の鰹節を見る眼は天下無双で、もう誤魔化すなんて出来ないですからね。