顔商店街の賑わいを次の世代につなげたい

第3話

次の世代へのバトンタッチを

―― 八王子商店連盟の理事長として、今後どのような商店街を作っていこうとお考えか、お聞かせください。

一時は八王子織物と言えば全国でも名の知られた織物だったですよね。町の中に大きな産業があるとお金もすごく動くんです。そこで働く人たちが買い物をする、全国から買い付けに来る人たちがお金を落とす。ですから、かつて八王子は結構潤っていましたよね。昔の八日町は本当に賑わいのある文字通り八王子の中心で、私が若かった頃はそういう立派な諸先輩のお店がいっぱいあった。私は郊外のお店に関心が行ってしまって、商店街活動には当時まるっきり興味が無かったんです。ただ、会合も行かないと先輩に怒られるから、一番端でじっと目立たないようにしていたものです(笑)。

今、自分たちがその後を引き継いだわけですが、往時に比べてもう情けないような状態でしてね。本当に諸先輩に申し訳ない気持ちもあるんです。ただ努力不足と言うより、世の中全体が変わってしまって、商店街の在りようもまったく変わってきている実情はあります。

昭和初期の甲州街道・八日町の賑わい
(株)郷土出版社 刊『目で見る八王子・日野の100年』p70より転載

横浜元町は今も盛大な商店街ですが、やっぱりちらりほらりと昔からのお店があるんですよ。ここ10年かそこらでこの場所で商売していたらまず成り立たないようなお店なのですぐ分かります。しかし現在機軸になっているお店のほとんどは全国展開しているようなお店が多くて、それで賑わいが出ている。そこにより人が集まるように地下鉄を引っ張ったりいろいろな努力をしている。よく地下鉄があるから発展したって言う人がいるけど、それは話があべこべなんです。

元町はそうやって活性化して、町の名前を存続させてますよね。それには大変な努力とある意味では恵まれた要素があったんだと思うんです。八王子のこの甲州街道沿いはまた状況が違います。どうやったら今みたいに物が潤沢にあって、あまり物を欲がらない時代に、町の中核になるお店を作れるのかな、と思っているんですけれど。

―― 八王子ではどんな方法が有効だとお考えですか?

八王子は歴史がある町ですよね。それは歴史に興味の無い人にとってみれば何の役にも立たないかもしれない。でもお金を稼いで、美味しいものを食べて好きなところに行けて、その上に何かあるか、と考えたときに、やっぱり自分の背景にある歴史とか伝統っていうのは大事にしていかなくちゃいけないし、次の時代にちゃんと繋いでいく努力が一方で大切なんじゃないかな、と思うんです。歴史とか伝統は一朝一夕には出来ません。みんな過去の人たちが担って、バトンタッチしてきたから今があるので、私はなんとかそれを次の世代に続けて行きたいんですね。もちろん、歴史や伝統が、時代から遅れていく自分たちの隠れ蓑になっちゃいけないんですけどね。

―― 「八王子まつり」はまさに歴史と伝統を受け継ぐものの一つですよね。

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八幡八雲神社
八王子東の鎮守として尊崇されている

そうですね、「八王子まつり」は比較的ずっと続いてきましたが、ただ近年はフェスティバル化していたんですよ。もともとは八幡八雲神社の神様のための祭礼で神事ですよね。そこに人間様が便乗して楽しんでいたわけで(笑)。最近それを見直そう、本来の祭りに戻そうっていう機運が出てきて、ちょうど時代と合っていたんでしょうね、山車もここ15年くらいの間に、われわれ八日町をはじめ3つの町内会で相次いで新しくすることが出来ましてね。それもお祭りの活発化のきっかけになったのかな、と思います。


祭りを生かして「八王子ブランド」の発信地に

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2006年八王子祭り、井桁屋前で待機する八日町の山車

八王子では人形を山車の上に飾る伝統があるんです。八日町や横山町の人形山車が波及して他の町内会にも伝統的な山車が増えてきました。私どもの山車が出来た一昨年はPR効果もあったし、お天気に恵まれたこともあって40万人。その次の年が45万人、今年はさらに盛大で人出が初めて50万人を超えたんです。その山車を一年中しまい込んでいるのは宝の持ち腐れでしょう。どこかに飾れる場所が出来ないだろうかって考えているんですけれどね。それを町作りとうまく組み合わせられないか。

大型店ももちろんあった方がいいですけれど、大型店頼みの中心性というのは脆弱な気がしてしかたないんです。物が余っている時代に物売りの親玉を連れてきてもね(笑)。八王子では最近、新たな郊外型の大型ショッピングセンターの計画が持ち上がっているんですが、何か時代に逆行しているような気がするんですよね。

八日町には「いちょうホール」も八王子夢美術館もありますし、すぐ近所にはユーミンの実家もあります (笑)。八王子の文化や歴史もうまく絡めて、甲州街道沿いのここから何らかの文化発信が出来れば、独自性が出せるんじゃないかって思ってるんですよ。現在の賑やかな町って金太郎飴みたいに全国どこにでもあるお店がたくさんあって、それは活性化の一つだとは思いますが、ここ独自のカラーが出せれば、それは「八王子ブランド」になるんじゃないか。それで人口54万人の八王子の人たちに、年に何回かは八日町に行ってみようと思ってもらえればな、と思いますね。今はお祭りの時しか来ないけれど、お祭り会館が出来ればその機会も増えるでしょう。私も現役はあと5年くらいだと思いますので、これを最後の仕事にしたいと思ってるんです(笑)。

―― それは是非実現していただきたいと願っています。有難うございました。(了)