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ポケットバイク、通称ポケバイは1970年代に日本で誕生したミニチュアサイズのバイクのこと。下は4歳頃から上は小学校6年生くらいまで、子供たちのモータースポーツ入門編としてブームとなり、その後、その中からロードレースのワールドチャンピオンが多数誕生した。そんなポケバイに夢中で毎週末にサーキットで走りこむ少年がいると聞き、12月最初の土曜日、「中央サーキット藤野」を訪れた。ここは中央高速相模湖出口から車で5分、周囲を山に囲まれた素晴らしい環境で、八王子からの利用者も多い。

中央サーキット藤野
門馬巧実くんは現在7歳。4歳でポケバイに乗りはじめ、レース初参戦は5歳だったそうだ。”ポケバイの聖地”サーキット秋ヶ瀬で巧実君が現在参加している「DAIJIRO-CUP」での最高位は4位入賞。ここ2戦は転倒リタイアで、現在の年間ランキングは参加約30台中9〜10位という。レースに参加するには、安定した走行ができるレベルに達する必要があるが、それには週2、3回練習しても半年から1年くらいはかかるという。お父さんの門馬健(たけし)さんは機械メーカーに勤めるサラリーマン。現在のところ、週末は家族でずっと巧実君の練習につききりとなっている。お父さんにお話をうかがった。

 

 

純粋なスポーツとして楽しむバイク 

門馬さん:「バイクというといまだに暴走族のイメージを持つ人もあるかもしれませんが、現在世界で活躍しているライダーたちは暴走行為とは無縁で、子供の頃からポケバイで練習してステップアップした人がほとんどです。バイクにはサーキットでは乗るけれども公道では乗らない、公道免許も持っていない。理由を聞くと、ガードレールも車もある公道は危険だし怖い、というんです。サーキットで走るのが面白い、という純粋にスポーツとして楽しむ形ですね。

サーキット事務所:ホームページ

もちろん、転倒もするしそのままでは危険です。だからこそプロテクターはしっかり作られていて、背中にはカメの甲羅状のものが入っていますし、肘も膝も保護されていて、転倒しても怪我がないようになっています。スリルはあるけれど危険なものではないんです。巧実が所属しているチームには、世界グランプリでメカニックをやっていた方がいて、モータースポーツは危険ではない、ということを広めています。ホンダやヤマハ所属のチャンピオン経験者も時々こういうサーキットで子供向けの講習会を開いたりしています。」

 

 
お父さん

ポケバイを始めたきっかけ

  門馬さん:「私は高校生でオートバイに乗り始めて、大学時代には大きなコースではありませんがミニバイクでサーキットを走った経験もあります。家には私が集めたレースのビデオが何百本とあって、巧実が小さい頃から一緒に観ていました。乗りたいと言い出したのは息子が2歳の時です。中古のポケバイにエンジンをかけずに乗せていたら、エンジンをかけたがりまして。4歳でエンジンをかけて乗らせたらもう、楽しい、と言ってそのまま今に至っています(笑)。休みはずっと子供に付き合ってサーキットに走りに行く感じですが、家族全員で動く楽しみもありますね」

 

お父さんの門馬健さん。 メカニックとしてマシンのメンテナンスも。 「やっているうちに覚えてきますから、何も知らなくても全然心配いりません」
 
妹の千珠(せんじゅ)ちゃんもお手伝い
小さなマシンだが40ccエンジン搭載。ストレートなら80〜90キロは出るかなりのパワーだが、ちょっとした調整で調子がまったく変わってしまうそうだ。
お母さんの朝子さんも練習を見守る。
 

お母さんの朝子(あさこ)さん:「主人はもうどっちが本業かっていう感じで(笑)、会社に行っている時間とバイクを触っている時間のどっちが長いか分からないくらいです」
門馬さん:「いやいや、子供のバイクばっかりやってるからじゃないか、と思われないように仕事はちゃんとやっています(笑)」

 

門馬さん:「こういうサーキットから世界の舞台でチャンピオンになった人も多いので、巧実も “レーサーになって世界を回りたい”という夢があるようです。ただ、走っていれば世界GPまで行けると思っていて、その勘違いは非常に怖いです(笑)。そういう夢を持つのはいいことだな、と思いますが、一方でそれが壊れたときにどうなるのか、ちょっと心配でもあります。その時は自分で考えるとは思うんですけれど。レーサー人生が終わったらメカニックになる、って言うんですよ (笑)。子供ってみんなそうなのかなあ。 自分からやると言ったのでやらせていますが、もうやめるよ、と言ったら無理にやらせることはしません。ただ、今はやる気まんまんなので、これがいつまで続くかなあ、と思っているんですけどね(笑)」

気になる費用は?


いくらかかるかは気になるところ。まずマシンが約20万、ツナギが安いのだと6、7万から、ヘルメットが3万と、初期投資に30万くらいかかる。あとはサーキット走行料と移動の高速代その他で月10万くらい。他にもタイヤ交換などメンテナンスも必要。

門馬さん:「最初はいくらお金がかかるんだろう、というのが心配でしたね(笑)。ただ、一つのものを集中してやるのはいいと思ったし、私自身も好きでしたから、じゃあやってみようか、という感じでした。やってみて初めて結構かかるんだな、と分かりました。もう滅多に飲みにも行きません(笑)。こういう話をしちゃうとやりたい人の出鼻を挫くことになるんですが」

朝子さん:「ただ何をやるにしても最初は結構かかりますからね。ピアノだってピアノを買うところから始まるんだから、と言い聞かせながらやっています (笑)。でも家族共通の話題があって接する時間も長いですし、お金じゃ買えないいいこともあるな、と思っています。“家族の絆、プライスレス”っていう感じです(笑) 」

 

 





週末は愛犬も一緒に家族で移動


 

 

 

---ポケバイやっていて何が楽しい?

うーん、抜かすのとか、走るときに滑るのが楽しい。

 

---滑るってスリップするってこと?怖くない?

怖くない。1年たてばもう怖くなくなると思う。

 

---お父さんが毎日遅くまでバイクをいじってくれてるでしょ?それを見てどう思う?

速いエンジンになりそうかな、って思う。

 

---〔笑)バイクをずっと続けていて嫌になったことある?

ない!ずっと楽しい。

 

---将来の目標はなに?どうなりたい?

日本GPとかのレーサー。

 

さあ、走行開始!

 


車体を倒してコーナーへ突入

 

---次のレースが今年の最終戦でしょ。なにか目標ってあるかな?

次は最終戦だから、雨が嫌いだから晴れて、速い子がいなくて、1位になるのがいい。1位になったことあるけど1回だけだから。

 

---雨でもやるんだ!速い人に勝ちたくないの?

勝ちたいと思うよ。このあいだ練習だけど1コーナーで抜いたから、たぶんいけるかなーって思います。

 

---頑張ってね!

うん!

 

 

本番さながらのデッドヒート


*最終戦の順位は34台参加中16位だったそうです。来季はさらに上を目指して頑張れ!巧実君。